被写体からの光はレンズを通ってフィルム面上に像を結ぶ。だが、厳密にいうと、正確にフィルム面上に像を結ぶのは、距離リングを操作してピントをはっきり合わせた被写体の光だ。狙った被写体より少し手前の地点からきた光はフィルムの位置ではまだ像を結ばずフィルムを通過してかちピントを結ぶ。同様に被写体の後側の地点からきた光は、フィルムより手前で像を結んでしよう。そのため、これらの光はフィルム面では点として結像しないで、ある大きさの円としてボケている。しかし、肉眼には細かなものを見分ける能力に限界があって、このボケ(錯乱円)も点としか感じられないくらいに小さければ、ボケていても、ボケているのがわからずはっきり写っているのと同じにみえる。この肉眼でボケ円が点と見える限界を許容ボケまたは最小錯乱円と呼ぶ。この錯乱円の大きさは、引伸し倍率とそれを見る距離の問題でも変わってくるが、一般的に、35mm判をキヤビネ判くらいに拡大するとして、その倍率から1/30〜l/35mmに決められている。これ以下のボケなら、引伸してもピントが合っていると見える。このはっきり写っているように見えるピントの奥行きを深度といい、被写体側の深度を被写界深度、フイルム側の深度を焦点深度と呼んでいる。被写界深度と焦点深度はレンズの結像の性質から表裏一体の関係だが、焦点深度は撮影のときにはそれほど関係ないので、普通に深度といえば被写界深度のことを指す。 |